今回の首相の訪日は「氷を溶かす旅」であるとの触れ込みであった。この旅の成果が着実に上がることを期待したい。国会での演説は、遣唐使の阿部仲麻呂に言及するなど、歴史にかかわる部分が耳に残っている。そのためか、演説中の拍手の回数は、決して多かったとは言えない。
かって来日した当時の最高実力者ケ小平副首相は「過去の出来事は過ぎ去った」と発言し、日中友好の促進に期待を持たせた。また江沢民主席は天安門事件後の日本の対応に感謝し、天皇陛下のご訪中を要請した。しかしいずれの場合もその後は、教科書や靖国問題など、両国の間に緊張感が走った。今回の友好ムードも、北京オリンピックや上海博覧会までのことで、それらが終ればまたもや難題を持ち出すのではないかとの観測もある。今回の日中外交の評価に、自民党の外交部会では厳しい意見が飛び交った。安倍総理は昨年訪中していることから、外交儀礼からも、次は胡錦涛主席の来日だとする指摘である。また拉致問題、東シナ海問題に具体的な進展が見られなかったことへの不満である。
温家宝首相は滞在中まさに微笑み外交を展開し、日本人にこよなく親近感を与えた。一方、国会演説における原稿の読み落とし、韓国から始まった今回の旅など、気になる点がないわけではない。決して過去の轍を踏まぬよう、また踏ませぬよう、首相の訪日を評価し過ぎても、冷ややかに見すぎてもならない。