信任状捧呈式

 


 今回の首相の訪日は「氷を溶かす旅」であるとの触れ込みであった。この旅の成果が着実に上がることを期待したい。国会での演説は、遣唐使の阿部仲麻呂に言及するなど、歴史にかかわる部分が耳に残っている。そのためか、演説中の拍手の回数は、決して多かったとは言えない。
 かって来日した当時の最高実力者ケ小平副首相は「過去の出来事は過ぎ去った」と発言し、日中友好の促進に期待を持たせた。また江沢民主席は天安門事件後の日本の対応に感謝し、天皇陛下のご訪中を要請した。しかしいずれの場合もその後は、教科書や靖国問題など、両国の間に緊張感が走った。今回の友好ムードも、北京オリンピックや上海博覧会までのことで、それらが終ればまたもや難題を持ち出すのではないかとの観測もある。今回の日中外交の評価に、自民党の外交部会では厳しい意見が飛び交った。安倍総理は昨年訪中していることから、外交儀礼からも、次は胡錦涛主席の来日だとする指摘である。また拉致問題、東シナ海問題に具体的な進展が見られなかったことへの不満である。
 温家宝首相は滞在中まさに微笑み外交を展開し、日本人にこよなく親近感を与えた。一方、国会演説における原稿の読み落とし、韓国から始まった今回の旅など、気になる点がないわけではない。決して過去の轍を踏まぬよう、また踏ませぬよう、首相の訪日を評価し過ぎても、冷ややかに見すぎてもならない。

食への関心

 


 3月22日から27日まで、第1回日中議員会議が開催された。日本側は各党の参議院議員であり、中国側は路甬祥全人代副委員長ほか10名である。議題は予め「政治・安全保障」「経済」「環境・エネルギー」に決められていた。議論は当然のごとく、靖国問題、東シナ海油田問題など多岐にわたったが、1回目ということもあってか、きわどい問題提起を行いながらも、激しいやり取りにはいたらなかった。
 「政治・安全保障」分野の基調方向が行われた後、わたくしは歴史問題について発言した。それは現在進行中の「日中歴史共同研究会」の成果を意義あるものにしたいと考えたからである(この成果に懸念を表明している意見もある。正論5月号)。この研究会は両国の外相により、歴史に対する客観的認識を深め、相互理解の増進を目的に設置されることになったものである。これにより、歴史認識の共有は難しいとしても、歴史的事実の確認や事象に対する見解の違いを明らかにできると期待している。そこで3つのことを提起した。
 第1に、研究成果を両国民がともに冷静に受け止めること。例えば、南京事件の死亡者数に食い違いがあっても、異なる数値を前提に今後の研究、議論を進めるべきである。ことに中国にあっては、数値の違いをもって「日本は事実を隠蔽しているとか、反省が足りない」などと喧伝すべきではないことを強調した。
 第2に、盧溝橋などの抗日戦争記念館の展示内容を、研究成果に応じて改めること。これは中国の若者たちに歴史には多面的な見方があることを示すためである。
 第3に、研究成果を教科書にも反映させること。子供たちに一方的な情報を、歴史的事実として受けとめさせないためである。その際、日本政府は、教科書の検定などのあり方から、教科書の記述内容には寛容できないことを付言しておいた。
 これらのことについて中国側からの直接的な反論も同意も聞けなかった。
 「経済」分野では、知的財産権問題について中国の対応を求めた。中国にはこれらを重視する姿勢を見せてはきているが、依然として先進国並みの水準には達していない。これに対し中国は、知的財産権の確立は自国にとっても有益であるとの認識を明らかにした。
 今後もテーマを絞り、突っ込んだ議論を重ねてゆく必要がある。儀礼的な議論に終らせては折角の機会がもったいない。


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